鉄道運転士の通勤

鉄道現場

ところで現場の鉄道マンは通勤手段に何を使っていると思いますか?

鉄道会社に入ると自社線のフリーパスがもらえるので当然鉄道利用でしょう?と思われがちですが、実をいうとそんなに単純なものではありません。

今日は小ネタで鉄道運転士の通勤事情について書きたいと思います。

自社線パス

鉄道会社に入るメリットとして「自社線なら乗り放題」という話を聞いたことがある方がいると思います。いわゆる「全線パス」ですが、実は会社によってまちまちで自社線内であっても関連区間の定期券を渡される場合、全線パスを渡される場合、それどころか家族までパスが出る場合と取り扱いは各社それぞれ本当に違います。

JR西日本では入社当初は所属支社のパスが渡され、職位が上がると全線パスになると聞いたことがあります。知人から『西日本⇔会社線』というICOCAを見せられたときは心底羨ましいと思いましたね。話によると近年では隣接支社までのパスに縮小されたようですがそれでも広大なエリアです。

元JR東日本の知人が上司に会社を辞めると告げたときの脅し文句が「全線パスがなくなるぞ!それでもいいのか!」だったというのですから特典というよりは最早利権と化しているような気がします。

知り合いで東京メトロの運転士と結婚した方がいましたが、家族も無料だから住まいはメトロの沿線で!と言っていたのを覚えています。今も家族まで無料かは存じ上げませんが大変恵まれている例でしょう。

近鉄では家族優待券があるので大阪~名古屋が特急券だけで乗れると公言していたドラ息子の話が印象的でした。ただ近鉄は乗車券販売ノルマがあって、伊勢神宮初詣きっぷを大量自爆買いしているという話も聞いたのでいいことばかりではなさそうです。もちろん周囲に売りさばいていたので大損しているわけではないと思いますが。

ちなみに自分が所属している会社では社員のみ社線パスが出ていますが、以前所属していた会社は社員だけでなく家族パスもあったのでそれはもう自由に使いまくっていました。福利厚生として大々的に宣伝したらリクルートも捗ると思うのですが、地元利用者の手前「高い運賃払わせているのに社員と関係者にパスが出るとはけしからん!」という論調になるのを恐れて大っぴらにできない事情もあるとかなんとか。確かに地方民鉄ほど運賃が高いので批判は免れ得ないでしょうね。

もちろん他社線を使わなくては通勤できない場合は別途交通費が支給になる例がほとんどです。上記のパスも含めて通勤費は全額支給が大原則、これは変わりありません。

もっとも経由によって他社線のほうが便利がよくても多少遠回りになろうが自社線を使えという場合、あまりに通勤距離が長い場合は通勤とは認められない(近くに住みなさいと言われます)場合、そもそも会社の規定で通勤費が固定でそれ以上は出ないなどの例外事項があったりしますが、これはまた別の機会にお話しします。

使いたくても使いづらい鉄道

交通費が出る、ましてや自社線が乗れるとあらば当然通勤は鉄道利用となりそうですが、それがそうとならないのが交通機関たる所以です。キーワードは「運転間隔」です。特に運転職場ではこれがネックになってきます。

立地にもよりますが、乗務区というのはたいてい拠点駅に設置されているものです。概ね徒歩数分という立地でしょう。となると通勤に何の支障もなさそうですが、注意しなければならないのが『自社の列車=自分の乗務する列車』という構図です。

運転士は乗務前に必ず点呼があります。会社によって基準は違いますが、概ね担当列車が発車する20分ぐらい前が標準でしょうか。もちろん点呼時間から勤務時間の計算が始まりますのでそれまでに職場に来ればよいとはいえ流石にギリギリというわけにはいきません。着替えや準備も含めて最悪でも15分前には職場に到着しておきたいものです。

ここで問題になるのが列車の運転頻度です。都心部の鉄道でしたらデータイムでも10分に1本、最悪でも15分に1本は走っているので支障はありません。しかしこれが地方民鉄ともなると30分に1本、少なければ1時間に1本という例もあるかと思います。これが鉄道利用の障壁になるのです。

仮に30分おきの運転頻度の線区で11時00分の列車から乗務する行路だったとします。逆算で出勤時間は10時40分、その15分前だと職場には10時25分までには着きたいところです。しかし乗務列車の一本前は10時30分で間に合いません。そうなると更に一本前10時ちょうどの列車で職場に来なければいけなくなります。

都心に比べて需要が少ない地方では運転間隔が開くのはやむなし…

職場で余裕をみるという考えもできますが、もしクルマ通勤が許されるとなるとこの時間を端折ることができます。運転間隔が開いている地方では出勤時刻のミスマッチによりクルマ通勤が増えるというロジックです。

もちろんクルマで来るにしても今度は渋滞というリスクが出てきます。他社線経由であっても列車の遅延であれば遅刻も大目にみてもらえますが、渋滞で遅刻となると「なぜもっと早く出て来なかったのか」と大目玉を喰らいます。なので長距離通勤をしている人は多少の待ち時間があっても鉄道利用が多い傾向にあります。

ちなみに私の場合、いまの職場は家からクルマでおおよそ20分、列車を使うと軽く40分かかる絶妙な場所に住んでおりますので当然前者を利用しております。以前所属していた会社は駅まで徒歩7分、電車6分でしたが運転間隔がバラバラで出勤時刻も早朝があったりしたのでクルマ通勤でした。仮に通勤に都合がいい列車があったとしても渋滞のリスクが少ないのであえて電車を避けていました。

家と職場は近いほうがいい?

しかし何事にも例外があって、地方の会社であっても最寄り駅まではクルマ利用可でも職場までは自社線使用以外は認めないという場合があります。正直、日勤行路だと朝早い場合があるので運転間隔を考えると地獄ですね。行路によっては夜遅くに終了となる場合もあるので、早く家に帰りたいのに列車を待たなくてはいけない、しかも自分が担当した次の列車は1時間後…想像しただけで辛すぎます。

ここまでは駅近であることを前提に書いていますが、大手では車庫が広大で乗務区が駅から離れている場合もあります。場合によっては歩いて数十分、電車通勤が推奨の大手となるとこれは厳しい数字です。

広い構内の端にある車庫

こうなると職場近くに居を構えるという選択肢が現実味を帯びてきます。

そもそも通勤時間というのは無駄時間ともいえるので職場が近いに越したことがありません。ただ職場に近いと今度は非常時に呼出というリスク(?)も出てくるので難しいところではあります。

ちなみに酒を飲む人は非番や休日に呼び出しを受けることはあまりありません。そりゃあ断られるのをわかっていて電話するわけありませんからね。大手にいたときはそれを逆手にとって職場から歩いて3分のところに住んでいたのは今だから話せることです。

結論:自転車で通える範囲に住むのがよい。

とはいえ地方になればなるほど持ち家率も増え、それが代々の土地で引っ越しなんてできない場合がありますし、大手だとそれこそ異動があるのでそんなに都合よくいくはずもなく悩ましいところです。

会社によって事情は違うものの、住まいと職場の距離そして通勤の問題はサラリーマンである以上永遠の課題であると思います。

あかつき

しがない鉄道マン・兼業ミュージシャン。 機関車乗りを長くやったのち電車乗りに。そしてまたもや機関車乗りになったあと電車乗りに。 フラフラしながら今日も小さな電車を転がしています。

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